TITLE:福井県消化管撮影研究会

平成15年度活動記録

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内容の詳細は各開催回数の所をクリックしてください
 
開 催 回開 催 日会  場内  容
第61回H16年4月17日(水)福井県済生会病院 症例検討会
特別講演「見逃さない為の上部消化管撮影技術とその勉強の仕方」
第60回H16年3月3日(水)福井県済生会病院各施設DR写真紹介
会員発表「症例紹介2 - パソコンで症例を見よう- 」
症例検討会
第59回H15年12月3日(水)春江病院会員発表1「上部消化管ルーチン撮影の紹介」
会員発表2「症例紹介1 - パソコンで症例を見よう- 」
症例検討会
第58回H15年10月1日(水)公立丹南病院会員発表1「レポートのすすめ方」
会員発表2「消化管疾患の病態と画像」
症例検討会
第57回H15年8月6日(水)福井県済生会病院医師講演「大腸疾患における注腸検査の役割」
注腸ワンポイントアドバイス「見逃しをさけるためのポイント」
症例検討会
第56回H15年6月4日(水)福井県立病院医師講演「胃癌X線診断の基礎」
平成15年度総会
症例検討会

第61回研究会

症例検討会

今回は講師の小川先生の会場入りが少しおくれた為、症例検討会から始まった。よく解らないが、フイルムを簡単に視ただけでは、ホルニクスの前壁、やや大弯よりであろうかホールドの集中を伴っているⅡa+Ⅱc様病変であった。急遽小川先生に内視鏡フイルム、標本の解説をお願いし5型(表面はⅡc様だが下はスキルスタイプ)ssと解説していただいた。

特別講演  「 見逃さない為の上部消化管撮影技術とその勉強の仕方 」

大阪物療専門学校  放射線学長   小川 利政 先生(日本消化管画像研究会)

大阪物療 小川先生

本日は大阪放射線技師会会長で、鈴鹿の消化管セミナーでもご活躍されている大阪物療・小川利政先生に、『見逃さない為の上部消化管撮影技術とその勉強の仕方』について講演をしていただいた。
さすがに大阪消化管撮影技術研究会を引っ張ってこられた方である。説得力があり、しかも理解しやすい話であった。(私などとは段違いの話し方であった。)
ある高名なドクターが講演で、「X線は進行癌の発見に強く微少癌に弱い。PG法は内視鏡の精度に依存はするが微少癌の発見に強い。」と発言されていたそうである。小川先生は、その内容はともかくとして、これからも胃検診をX線(バリウム検査)で行なっていくためには、強い危機感を持つことが必要であり、それぞれがX線は内視鏡に負けないといわれるレベルまで引き上げていかなければ存続は危ういであろうと述べておられた。
さて胃検査の見逃しやすい部位は、昔から「入り口・出口・曲り角」と言われているが、消化管病変の見逃し要因として
1) 解剖学的要因(バリウム・空気⇨注入時の形態バリエーション)
2) 撮影・読影技能が未熟(全区域が描出されていない、粘膜の描出不良)
3) 症例の経験不足
があげられる。
今回は、たくさんの症例とともに各部位ごとのチェックポイントを、事細かに説明してくださったが、紙面の都合上、さわり程度の報告とさせていただく。
まず食道撮影であるが、ドックのルーチン撮影では、第一斜位の上下二分割を推奨され、動きによるブレ(高圧撮影)が無いことと、完全な二重造影で撮影することを勧められた。
胃上部では少し枚数が多くても早期癌で見つけることに主眼を置く(QOLの問題)べきで、バリウムの付きが悪いと感じたらオールラウンドのローリングに切り替える等の努力が大切である。
胃角部については、二重造影だけでなく必ず圧迫撮影を行なう必要があるとのことであった。圧迫撮影は、台を少し倒し、足を少し開いて肩をつけてもらい、圧迫した状態で体を左右にひねる、離す、押さえるを繰り返し行なうことがポイントである。
前庭部は、腹臥位圧迫の方が描出しやすく、二重造影では空気量に注意しなければいけない。幽門輪については圧迫を有効に使うことが大切であり、圧迫によるアーチファクトを作らないように気をつけて撮影することが必要である。胃の病変は一つ見つけたからといって気を抜かず、ルーチン撮影では少なくとも5㎜の病変を見つけることができることを理解すべきである。
最後に、X線写真・内視鏡写真・切除標本それぞれを対比すること、なによりも基本をしっかり行なうことが大切だと述べられた。今後の研究会の活動もその点に注意して行なう必要があり、非常に参考となった。また今回出席することができなかった会員諸氏は、一度は小川先生の講演をどこかで聞かれると良いと思います。

文責K,K 校正N,Y

第60回研究会

各施設のDR写真紹介

dr60.jpg

装置の更新が迫っている施設においては、DRシステムの選択は避けて通ることのできない時代となってきた。
そこで先駆者として使われている4施設のDR写真を提示していただき、それぞれに工夫されている点について話を伺った。
機器の選択については、施設や購入時期の問題などが絡んでいるようで、性能面からの選択に関するアドバイスが聞けなかったのが残念であった。
しかし3施設において400万画素の器機を使用しているが、100万画素でも問題はないとのことであり、耳寄りな話としては、将来I・I DRからFPDDRに交換できるシステムであることが選定の決め手となったという施設の話を聞くことができた。
フィルムはドライシステムが3施設、ウェットタイプが1施設あり、今後はドライシステムに変更されていくそうだ。コントラストの点では、ウェットタイプの写真が私的には好きであるが、最近の新しいタイプのドライシステムはかなり改善されており、コントラストがX線器械でなくドライフィルムプリンターにて調整ができるそうである。
さて、フィルムのコマ数であるが、半切で4コマ撮影が1施設、残りの3施設は6コマ撮影であった。どの施設でも通常はモニター診断をメインに行うため、6コマ撮影でも問題はないとのことであった。DR装置の使い方としては、9インチで透視観察、撮影は12インチと9インチを使い分けて使用しているとのことであった。

会員発表  「症例紹介2 - パソコンで症例を見よう - 」

福井県健康管理協会   木村 一雄 さん

今回は進行癌を2例、体上部後壁Ⅱc+Ⅲadvとプレピロリスの2型の症例であった。
1例目は体上部後壁Ⅱc+Ⅲadvの症例であるが、間接撮影で追加撮影有りの写真にて、フィルム上は陥凹+ホールドの集中が見られ、良性潰瘍か悪性病変かの判断に迷う症例であった。直接撮影においてもⅡc+Ⅲか、Ⅲ型か、良性潰瘍か迷う症例であった。しかしわずかながら肛側に陥凹が見られるフィルムと口側のホールドが中断しているフィルムが見つけられ、Ⅱc+Ⅲと指摘ができたが、深達度までにはおよばなかった。

 

2例目は間接フィルム(病変部指摘無し)、直接フィルムを流しながら、肉眼的分類は何かを当てようという出題であった。部位的には、プレピロリスということで、狭窄も見られ指摘はできたが、さて肉眼型は?といえば???であった。フィルムをよくよく見れば、隆起+陥凹を疑うことができるが、私のような未熟者には正解を引き出すだけの力はなかった。でも肉眼型を読む人もいることを考えると、読影の未熟さか、技術の問題か、いろいろ考えなければいけない症例であった。

症例検討会

kaijou60.jpg

今回の症例は、症例検討手引書を参考に順序よく読影をしていくと解答が出るという典型的な症例であっ た。
担当技師の努力が報われるのでは?
病変は胃角前壁小弯よりにあり、陥凹エッジがハッキリわかり陥凹の中は顆粒陰影がたくさん見られた。
またホールドの集中と中断、腫大がみられ、そして病変が大きかったためか深達度で深読みをしてしまった。
内視鏡フィルムの説明のときも陥凹が深くきたなく見え進行癌を疑ったが、Ⅱc,34x28mmの未分化型癌であった。

 
文責K,K 校正N,Y

第59回研究会

会員発表1  「 上部消化管ルーチン撮影の紹介 」

春江病院   前川 晃一郎 さん

春江病院 前川さん

春江病院では胃のルーチン検査が年間10数件しかないとのことで、今年の消化器集検学会で採用された二重造影像を主体とした新・撮影法ではなく、従来どおりの撮影法で行っているそうだ。
やはり長年採用している撮影法が安心して業務がこなせるからだろうか?
撮影手順については以下の通りで、撮影のポイントをふまえながら説明がされた。
1、 前壁撮影(レリーフ撮影)
2、 食道
3、 立位充満像撮影
4、 腹臥位充満像撮影
5、 背臥位二重造影
6、 背臥位二重造影(二分割)
7、 背臥位二重造影(四分割)
8、 腹臥位二重造影(胃角部~前庭部を二重造影)
9、 半立位背臥位二重造影(二分割)
10、圧迫撮影(胃体中部~胃角部~前庭部)
会場からは、前壁の情報量が少ないのではとのアドバイスがあり、今後の課題として残った。

会員発表2  「症例紹介1 - パソコンで症例を見よう - 」

福井県健康管理協会   木村 一雄 さん

今回2症例(基本型)と多発病変型とが出題された。
症例1)撮影体位を考えようということで最初に標本が見せられた。
幽門切除の前壁側切開(大弯に病変があり)の標本であったが、ホールドの異常?が見える程度でこれだという所見を捉えることができなかった。
そのためルーチン撮影で撮影される主な体位では病変が指摘できなかった。
逆傾斜の第二斜位で病変が写って入るのだが、コロンガスに重なり病変が分かりにくく指摘が難しかった。
Antrumにバリウムを溜めて、第一斜位でバリウムをゆっくり抜いていくと病変が写し出された。
何気ないローリングを行ってもバリウムが陥凹に溜っているとは限らないので、透視下においてバリウムの流れを注意深く観察する必要がある。病変はAntrum大弯に隆起をともなったⅡcがあった。
症例2)X線写真が写し出され、異常部位を見つけなさいとのことであった。
しかしスライドが悪いのか、それともわずかな病変部の変化が見えない為か、会場からお叱りの声が聞こえてきながらも進行していった。
病変はareaの不整様に写り、わずかな変化であったため分かりにくかったのであるが、透視下での観察力を上げるためには、一部の写真で指摘することができるようになるのも必要なのでは?
病変はAntrum大弯にⅡcがあった。

kaijou59.jpg

この2症例は、一例は辺縁がハッキリ追えるタイプ、2例目は辺縁が分かりにくいタイプで分化型の症例であった。
症例3)多発病変の症例であった。まず、全ての内視鏡とX線写真を提示して、病変はいくつであるかと出題された。
最近、胃のバリウム検査は内視鏡先行で、病変の情報とともに透視の依頼が来ることを考慮すると、ドクターとの意志の疎通は欠かせない物となってくる。
今回の症例ではどうだったのだろう。切除標本とフィルムの病変数が一致しない?それともパソコンのせい?出題者が悪いのかな?・・・
結局、正解者は無しであった。
みなさんの施設では多発病変の時にはどのように撮影しているのであろうか。
手術を考えて幽門側切除なら多発病変でも指示された病変からオラールサイドには何もないと言えるような写真を提供するか、病変すべてを指摘できる写真を写し、さらにオラールサイドには何もないと証明する写真を提供しているのか。私としては後者であることを願っていますが?

症例検討会

doku59.jpg

ドック検診で見つかった症例である。
症例1は、今、勉強したてのⅡcの症例にそっくりな形であったため、胃角前壁のⅡcと読まれてしまった。撮影を行った技師もⅡcと読んでいたが、ドクターはulserと読みピロリ菌(+)であった。結果は良性潰瘍
症例2は同じく後壁に集中をともなう陥凹性病変で、陥凹内はバリウムと粘液が汚く混ざっておりⅡcと読んだ。陥凹の深さを考えるならⅢ型の方が良いのでは?撮影を行った技師は、Ⅲ+Ⅱcを疑い、ドクターと同じ意見であったが、精密透視を見る限りホールドの先端もきれいで、陥凹所見も素直であると思われた。ピロリ菌(+)で結果は良性潰瘍であった。
時間もなく慌てた症例検討会であったため、写真の吟味ができなかったのが残念であるが、第一症例では、はみだし所見の有無(悪性所見の一つといわれる)、第二症例では、陥凹の汚さに目を奪われていたが、精密透視の陥凹所見、ホールドの先端をもっと注意深く読むべきだったのではないかと思われる。出題者側の意図もわかるのだが!

文責K,K 校正N,Y

第58回研究会

会員発表1  「 レポートのすすめ方 」

福井社会保険病院   島田 正儀 さん

 

社会保険病院 島田さん

レポートの進め方について今回話をして頂きました。書き方の詳細については技師会雑誌にも載っているので、そちらを参考にしてもらえば良いとの事で、まず撮影の心構えについての話から始まりました。
検査を受ける人の立場になって撮影を行う事が大切であり、注意深い観察と巧みな話術によって相手とのコミュニケーションを十分に取るなどの工夫を凝らし、責任ある撮影を行ってほしいとのことです。
そして「写った写真」でなく是非とも「写した写真」を撮って欲しいと力説されていました。
では「写した写真」とはなにか?ということになりますが、レポートを上手に書こうと努力を重ねれば、おのずと読影力も身についてくるので、訓練とセンスにより「写した写真」が提供できるようになっていくとの事でした。
読影の進め方と各ポイント
1) 一つの要素を考える時に、別の要素を考慮しない。
2)構築した病変はその病名が違っていても形状が正しければ読影としては正しかったと認識するべき。
3) 病変の形状を構築する技術は努力。
一生懸命やれば病変の顔も見えてくるようになり、立体的な構築もできてくるとのことです。
レポートが描けるようになったら、次はプロらしい表現を備えたレポートを書こうという事で、実際の症例を見ながら、書き方、表現について分かりやすく説明していただきました。

会員発表2  「 消化管疾患の病態と画像 」

高野病院    松沢 和成 さん

彼自信が苦労し身を持って勉強してまとめた事を、今回の研究会のために発表してくださいました。
以前、検診専門の施設に居たこともあり、「癌」すなわち悪性疾患については画像を見る機会も多く、ある程度の知識を持っていたけれど、開業医に勤めてからは良性の病変なども見るようになり、スランプに落ち入ったこともあるそうです。
最初に「癌」ってなんだろう?から始まり、良性疾患にはどんな病変があるのだろうとの疑問を持ち、今も模索中であるとの事ですが、今回良性疾患について報告をして頂きました。

高野病院 松澤さん

消化管疾患の4つの分類
1 炎症性疾患
(急性胃炎、慢性胃炎、メネトリエ病)
2 潰瘍性疾患
(急性胃潰瘍、慢性胃潰瘍、Zollinger- Ellison症候群、老人性胃潰瘍)~ 3 腫瘍性疾患
(上皮性腫瘍、非上皮性腫瘍)
4 その他
(胃憩室、胃静脈瘤、黄色腫、その他)
以上の良性疾患のX線画像と内視鏡写真を組み合わせながら、わかりやすく話をしていただきました。最後に十分な学習(疾患を学び適切な撮影)、そして向上心と改善の努力を怠らないことが大事だと述べて発表を終わりました。
松沢さん自信のレポートの書き方について会場より質問がありましたが、時間にして約五分、できるだけ英語を使用してレポートを記入するようにしているそうです。

症例検討会

会場借用時間が過ぎていたために、十分に時間がかけられなかった事が残念であった。
ルーチン撮影時において、病変に気付いた時の撮影の仕方、レポートの書き方に問題があるように思われた。病変は Antrum小弯から前壁にかけての大きな隆起性病変であったが、残念ながら全体像を把握するまでにはいかなかった。
術者自身は病変に気付き、同部位を圧迫等を駆使しながら丁寧に撮影しているのであるが、病変を写している写真とまではいかなかったようだ。二重造影で写し出すならば、バリウムを全部抜くのではなく少量のバリウムを病変付近に漂わせれば、病変の形態がわかりやすくなり、存在診断の確定がはっきりできるのではないかと思われた。

文責K,K 校正N,Y

第57回研究会

医師講演   「 大腸疾患における注腸検査の役割 」

福井県済生会病院 外科部長    宗本 義則 先生

済生会病院 宗本先生

最初に注腸X線検査の標準化(日本放射線技師会 注腸標準化研究会・編)の画像評価基準について、詳 しく説明して頂きました。
次に、大腸におけるX線検査がカメラに比べてなぜ衰退してしまったか・・・?と言う事で、その理由として、X線検査では生検や治療(止血、ポリペクトミー、EMRなど)ができないからではないかなど、X線検査の弱点と利点についての見解を述べられました。
X線検査の弱点
1、内視鏡検査に比べて良好なX線が撮影可能となるまでの技術の収得に時間がかかる
2、X線被曝が不可避(被検者、検者とも)
3、微細病変、色調の変化のみで高低差がほとんどない病変の描出が困難
4、前処置不良では病変を拾い上げることができない
5、内視鏡機器の進歩に比べてX線診断の進歩が少なく魅力が少ない(X線濃度・DR-digital radiography程度)
6、内視鏡と比較して便などの偽陽性が多く病変の拾い上げにおける特異度が低い
X線検査の利点、有用な疾患
1、画像が客観的であり、撮影時に見のがされていても読影の段で拾い上げることができる
2、粘膜像、充満像、二重造影像、圧迫像などの種々の造影を駆使することにより粘膜の様子ばかりでなく粘膜下層、筋層の描出が可能である
3、側面変形の分析で客観的な深達度診断が可能
4、概観撮影法として有用性が高い(他臓器との関係、圧排所見、浸潤、変形など)
5、びまん性の病変の描出はすぐれている
6、内視鏡の通過不可能な狭窄部の以深の診断が可能である
7、病変の溯及的検討が可能
8、炎症性腸疾患の診断に、病変の形態、部位、周在性などの把握が可能
続いて外科治療における注腸検査の意義、検査のポイントへと話が進みましたが、大切なのは1cmの大きさの病変を見逃さない画像を提供する事であって、5mmの病変を見つけてもそれはあまり大きな事ではないとのことでした。
外科治療における注腸検査の意義
1、直腸における存在部位診断(Rb,Ra,Rs)
2、多発癌
3、吻合予定部腸管における状態(憩室)
4、閉塞性大腸炎の併発している癌
5、横行結腸における存在部位診断
注腸検査のポイント
1、大きさ
2、範囲
3、形態
4、表面性状
5、存在部位
6、多発病変の分布
7、管外性病変
その後、症例をいくつか提示して頂きました。~リッジングホールドを思わせるヒダと隆起性陰影。パット見た感じではSMTで良いかなと思ったのですが、隆起の表面をよく洗った写真でその性状を見るとビラン様所見がある事、側面像では二重ラインなどが見られる事などから、隆起+陥凹の所見を呈する病変であることに気がついて欲しいと説明されました。結果はカルチノイドでした。
次に虚血性疾患の症例を提示し、X線の特徴である経過観察(治療、手術のタイミングなど)について、熱く語られていました。

注腸ワンポイントアドバイス  「 見逃しをさけるためのポイント 」

福井県済生会病院   坪内 啓正 さん

注腸X線検査において大腸癌を見逃してしまう原因として、腸管同士の重なり(S状結腸に多い)、ハウストラ上の表面型病変、多発憩室に隠れた病変、前処置不良による残便が顆粒状病変と区別しづらい等が考えられる。
これらの見逃しをさけるには、透視下での観察が重要である。
それには、バリウムを動かし残便、泡などを鑑別、観察したり、呼吸、圧迫により腸管の重なりを少なくしたり、憩室の中に隠れた病変の有無を確認するなど、検査の過程で病変を読み取ることが見逃しをさけることとなる。
まとめ(見逃しを避けるための留意点)
1、 腸管の重なりを少なくする(呼吸、圧迫、管球傾斜にて解除)
2、 多発憩室で安心しない。その中を圧迫等で最終確認。
3、 残便、泡などはバリウムを流して鑑別。
4、 初期段階でバリウムを小腸に流出させない。
5、 空気の過進展には注意(粘膜下病変等は見のがしやすい)
6、 二重造影における線部分の観察(接線像、ハウストラの形態、輪郭)

症例検討会(宗本先生指導)

kaijou57.jpg

症例1、 S状結腸にある進行癌
この症例で気づいて欲しいのは、病変そのものの読影より、腸管に出ている縞状のラインである。これは漿膜にまで炎症が進んでいるサインと見る必要がある。
症例2、 過去の手術で管腔が大きくなった症例(メガコロンではない)
立ち上がりがクリッとしているが中は凸凹、浅いビラン様で集中を伴っている。
粘膜下をひっぱって入る所見も見られ、2型進行癌を疑う。
Ⅱa+Ⅱcより2型進行癌(発育過程)ヘ移項した症例と考える。

 
文責K,K 校正N,Y

第56回研究会

医師講演     「 胃癌X線診断の基礎 」

福井県立病院   外科主任医長   細川 治 先生

県立病院 細川先生

今年度初の研究会は、お馴染みの細川先生による講演で始まりました。
まず、日本消化器集団検診学会の胃X線撮影法標準化委員会から、新・胃X線撮影法の基準についての最終答申案が出た事に基づいて、今後は福井県の胃検診も二重造影主体の新撮影法に改善していただきたいとの要望が述べられました。
先生には、初心者にもわかりやすいようにと基礎的な事を含めての講演をお願いした所、胃の区分から始まり大変丁寧に説明してくださいました。
内視鏡検査と比較して胃X線診断の長所は「病変の場所が確実に読影できる事」であり、内視鏡検査は時として病変の場所を誤認しやすい事などを揚げられていました。またそれを防ぐ方法として、内視鏡検査では標識となる場所を押さえながら読影する事が大切なポイントであるとの事でした。
次に食道胃接合部と噴門部との定義については、食道と胃の境界は生理学的境界、解剖学的境界、組織学的境界の3通りがあり混乱しやすい事、そして食道胃接合部腺癌の分類についての説明がありました。

kaijou56.jpg

陥凹型病巣の読影については、Ⅱc早期癌と類似病変との鑑別方法、陥凹性胃癌の深達度診断から分化型癌と未分化型癌の差異について述べられ、Ⅱc早期癌の悪性所見としての特徴をX線写真と内視鏡写真とを非常に細かく、時には襞の一本ずつを対比させながらの説明で、それぞれについてどのように見えるのかを非常にわかりやすく説明して下さいました。
最後に隆起性病変について、隆起性胃癌の画像的特徴と鑑別すべき胃隆起病変を知ることが早道であると述べられ、Ⅱa早期癌の肉眼的特徴や深達度診断、Ⅱa と他の腺てい腫などとの鑑別の指標を様々な症例を提示していただきながら説明してくださいました。胃底腺ポリープについては、検診で所見があった場合でも要精検にするべきではないとの見解も述べられていました。
細川先生には、研究会に何度も講演をして頂き大変お世話になっておりますが、今回もこころよくお引き受けくださいまして大変感謝しております。基礎的なことから最新の話題まで多くのスライドを用いて大変にわかりやすく説明していただきましてありがとうございました。

 

平成15年度総会                                                 

平成14年度事業報告
平成14年度会計報告
平成15年度事業報告
日本消化器集団検診学会東海北陸技師部会よりお知らせ

症例検討会

今回は、前年度にも胃透視を受けていたが術者も読影医も異常を指摘しておらずその結果「異常なし」となり、今年度の胃透視で所見が指摘された症例であった。
まず、その前年度の症例が提示され会員が読影を行った。
バリウムが十二指腸に流出しておりややブラインドの多い写真であったため、読影者も非常に読みづらい様子であった。
結論として前庭部のアレア不整を指摘しておわり、周りからもはっきりとした所見は見えないとの意見が多いようであった。
続いて、今年度の精検フィルムが提示された。
引き続き同じ会員に、以前の研究会にて使用したチェック項目シートを用いて読影を進めていただいた。

shourei56.jpg

体中部後壁に陥凹性病変があり、ヒダの集中及び中断が見られる。陥凹の深さは浅いが境界は明瞭であり、陥凹底にはインゼルが見られる。
結論はⅡcで、深達度はヒダの融合があるようにも見えるのでsmの未分化型癌であろうとの見解であったが、会場からは融合とは読めないのでmでよいのではないかとの意見が多かった。
ここでもう一度、前年度の写真を見ると・・・四分割のバリウム振り分け像にて体中部の後壁から大彎側にかけてのヒダが集中しているように見えるが、ヒダが混み合っている事と、ヒダの一部分がバリウムで覆われている状態であり、この写真だけで「異常あり」とするには無理があるように思われた。会場から、「異常あり」と言える写真を撮るためにはどのようにすれば良かったのかとの問題が提議された。
バリウムの流出量も多く、ヒダが粗大で混み合っている事から、もう少し空気量を増やし、第1斜位にて台の起到を利用してバリウムを付けた後にバリウムの抜けた二重造影が撮れていれば少なくともUlの集中像ぐらいは正面視できたのではないかという結論に達した。
最終診断は  Ⅱc m  por  であった。

文責K,K 校正N,Y
 
 
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Last-modified: 2023-05-17 (水) 13:59:31